届くことのない~言葉~【サソリ・ペイン】
- 2012/11/01 (Thu) |
- 暁 【NARUTO】 |
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「倒すのには骨が折れるだろうが、捜すのは雑作もないだろう。」
「・・・だろうさ。里の看板だからな。・・・にしても気にいらねぇな。他の奴に行かせりゃいいだろう。こんな大仕事で俺が砂に行くのは効率が悪い。」
「ツーマンセルだ。里の中に入るのはデイダラだけにするといい。」
ペインの身体を突き抜けるようにサソリの殺気が放たれる。
静かに駄々をこねる人形にペインの顔色が変わることはなく、結局「仕方ねぇな」と折れたのはサソリ。
「行ってくれるか?」
「どうせ・・・アンタの意思じゃ、どうにもならねぇ事なんだろ。」
サソリの吐いた言葉にペインの言葉が詰まる。
「図星か?」
感情のない人形にしては、楽しそうな声色だ。
「なんのことだ。」
抑揚なく言うも、相手はクックックと笑う。
「わからないとでも思っていたか?随分見縊られたものだな。」
‐‐‐『サソリには注意しろ。』
数刻前の黒幕の言葉が頭を掠める。
この任については、他の者を就かせるべきだと思う。
しかし、あの男はサソリを指名してきた。
おそらく気づいていたのだ。
サソリが陰で動く大きな力の存在に感づいている事を。
「おっと・・・天使様がお戻りのようだな。」
外を眺めた人形は、小南がこちらへ向かっている気配をよんで踵を返す。
「詳しいことは、追って連絡する。」
そう去る背中に伝えると、彼は振り返った。
「わかった。それまでにデイダラの怪我を完治させておこう。・・・なんだ?そんなおっかない顔するなよ。」
サソリ同様、表情というものが表に出ることはない筈だが、彼はそう比喩した。
「大蛇丸と違ってアンタが心配するほどのことを知っている訳じゃねぇぜ。まだな。」
肩を竦める彼に視線を突き刺した。
「まだ・・・か。・・・これ以上は検索するな。」
「ふん。忠告か?」
つまらなそうに言う彼に、短い言葉で伝える。
「助言だ。」
「助言ねぇ。随分甘いことぬかすじゃねーの。」
--- 失いたくはないのだ。
毎月のようにあったメンバー交代が、飛段が加入したのを機にピタリと止んだ。
主に角都とサソリは、すぐにパートナーを手にかけていたが、やっと今のパートナーで落ち着いたのだ。
暁という組織に属する全ての者が互いの実力を認め合い機能し始めた。
何よりも、それを統べる自分が信頼できる面子が揃っている。
だが、陰で暗躍するあの男は・・・うちはマダラはそうではない。
計画に支障が出るようであれば、躊躇うことなく切り捨てるだろう。
「なぁ、俺からも一つ助言だ。」
壁に背を預け、腕組みをした赤毛の男は、真剣な表情で言葉を紡ぐ。
「アンタがその気になりゃ、いつだって自由にしてやるよ。俺たちがな。忘れんな。アンタはこの暁の、俺たちのリーダーだ。」
強まった雨音を擦り抜けるように、サソリの言葉が耳に届く。
呼吸をしていない筈の“ペインの身体”が息をのんだ。
「まぁ、操られるのが好きって言うなら、殺して俺が操ってやるのも吝かじゃねぇぜ?アンタの能力は最高のコレクションになりそうだ。」
そう人間のように意地悪な笑いを浮かべた人形に
「それは遠慮しよう。」
とつられて死体が笑う。
これまた、人間のように。
「そうかい。・・・じゃあな、クソリーダー。」
人形の顔に戻った彼は、それでも少し楽しげに戻っていく。
「すまない。・・・ありがとう。」
永久に届くことのない小さな言の葉は、するりと足元へ落ちて風化した。
届くことのない~言葉~
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